11月初旬(たしかな手ごたえ) |
夏に比べて日の出と日の入りがあまりにも短すぎる。 大きな魚は用心深いから、昼間はじっとしていてエサを食わない。 しかし夕暮れと夜明けは、オドロクほど大胆に給餌活動を行なう。 だからこのわずかな一時が勝負となるのだが、この肝心な時間枠が秋が 深まるにつれて急激に縮まるから難儀なのだ。 とにかく、西に日が傾くとあっという間に暗闇が覆い、東の空がほんの少し 白んでくるとあっという間に湖面が輝く。 この季節、最も期待できる時間帯は日の出、入りの半時間前後であろうか。 今回も、もちろん大アジが目当てである。休日の最終日は乗合船に乗っ て鯛釣りなんかもやりたい。 しかも、それ以外に加えてスズキとアオリイカも狙おうというのである。 アオリイカ狙いの餌木は前日に釣具屋で買い求めた。そこで偶然で出会っ たのが、業界きっての極貧釣り師であったから、はたしてアドバイスなんか 受けて正解だったかどうか・・・。 初日の大アジは前回の晩秋ポイントに直行した。昼頃であったが時折小雨ま じりで、波も穏やかだし、釣れる予感がする。 まずサビキで様子を見ようと、仕掛けを底におろした途端にブルルンときた。 中アジがダブルだ。 その後も仕掛けを降ろすごとにアタリがあって、大アジも混じってわずか半時間。 目標の10匹を釣り上げたから見事にあっ気ない。 これ以上釣っても食いきれないし、海の上で何もせずポツンとしていても仕方な いので帰ることにした。 さて、当日本番の夕マズメ。 狙いはスズキ一本。一年越しの勝負時がきた。 地元の漁師が目の前で釣り上げたのが丁度一年前。必死に暴れまわるスズキ を目撃した日から、その光景が脳裏に焼き付いて離れないのだ。 教わった仕掛けで、さっそく試みたものの釣れなかった。 それから一年、少し工夫を加えて再挑戦である。 4サイクルの船外機は音が静かで、スロー運転が安定しているということだし 期待を持っていい。 道糸を送り出しておよそ30mの引き釣り。手釣りりだから、にわか漁師になった 気分。暗い海で孤独なのも海のオトコらしくて、イイのだ。 |
イカダのロープに引掛けないよう、迂回したときである。 しまった!ロープを引掛けたようだ。 いや、違う! グイグイ引く。強く確かな手応え。 30m先に激しいジャンプシーン。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 文章にならず。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 引いて引いて、しゃにむに手繰り寄せて、最後のテトロンから ナイロン糸に変わって、あと少し。ついに水面を割って出たの が、その正体。 わっ デッケエー。 暗いから焦った。引き寄せるのが性急過ぎて。 タモを手に取ろうとした矢先、フッと指先に重みが無くなって。 なんてこった。 ワームをつけたエギング針が大きく広がっている。奴のファイト ぶりを物語っていた。 その夜は、あまり寝れなかった。結局4時ごろ起きてしまい、 未明にゴソゴソ出かけた。 指先にアノ感触が焼き付いて離れないのだ。 そして、また夕暮れを待って、3度目の挑戦に胸を膨らませた。 朝より夕方が本命に違いない。絶対モノにしてみせる、もはや 執念のカタマリとなりつつある。 ヒットしたポイントを用心深く、何度も何度も往来してみたのだっ たが・・・。 夜もとっぷり暮れて、真っ暗け。ココロも真っ暗け。 | |
だけど、こんなアジばかり釣れると、キス釣りを 再開したくても当分できそうもない。 毎日釣りたてのアジの塩焼きが食えると思うと、 都会にいなくちゃならない理由が見つからないから 困るのだ。こんなゼイタクな悩みを分かち合う友が 欲しいなー。 | |
三日目は真鯛釣りの予定だったが、天気予報が最悪だっ たので取りやめた。ふいと目覚めた朝の2時。 無風に満天の星。 最後のチャンスとばかり、またゴソゴソと仕度することに した。夜明けまで時間がたっぷりあるし、懸念だった船外 機をイジッテいたら、部品のナットが折れてしまった。 とんだシクジリをしたもので船外機が使い物にならない。 ガックリである。4度目の正直でスズキが手中に納めえた ハズである。 一旦あきらめて部屋に戻ったのであるが、手こぎで別物を 狙ってもイイかなと思いついたので、またまたゴソゴソ船を 出した。 ガッタン、ガッタンとオールを漕ぎながら、しみじみ過去を 振り返ってみた。 かつては若狭湾の立石岬をゴムボートで漕ぎながら一周 したこともあったっけ。 常神半島の御神島へ漕ぎ出して風に流されて命からがら 帰ってきたこともあったっけ。 知多半島の貸しボートを借り、他人より一番遠くへ漕ぎ出 し、得意になっていたこともあったっけ。 もう昔のことだなぁーと、手漕ぎ時代を懐かしく思い出すの だった。 小さなイワシがピョンピョン跳ねてボートに体当たりしてくる ものもいて、暗闇の海は生き物が満ち溢れているようだ。 第一投、一本針に青イソメ。 オモリが底につくやいなや、強い引きがガンガンときた。 なんと、メッキの大型である。 それからはアジの引きがつづき、最後にはカサゴまでもきた。 船を出してわずか4、5百mぐらいの距離なのに、何としたこ とか。だから夜の釣りは、得体の知れぬ魅力があり過ぎて ウカウカ寝てなどおれないのだ。 子供と釣り師は昼寝するほど、よくソダツ・・・なんてね。 |
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スズキ狙いに意地を張っていたので、アオリイカを 試みる余裕がなかった。しかし、メッキ (ギンガメアジ)が釣れたから少しは気が晴れた。 刺身にしたら、妻がメチャおいしいと言って ほとんど一人で食いやがった。 |