孝行

おだやかな海は気持ちがオオラカになる。
のどかな秋の海でボート釣りなんかどう?
と近所に住む妹を誘った。
発作的に人を誘う、なんてことはいつものこと。
ときどきこうして身近な人を誘っては、罪滅ぼしである。

しかし今まで誘いに乗ってくれたのは妻だけで、それも
過去にたった2回だけ。
最近は夜釣りが多いこともあって誘うチャンスがない。
もっとも釣りよりも、草花を眺めているほうがイイらしいし、
活きのイイ魚を食べる方が、もっともっとイイと言うから
誘うだけムダなのだ。

これなど永遠にかなわぬことだろうが。
実は、娘たちと死ぬまで一度でいいから一緒にボート釣り
をしてみたいのだ。
かつては、父と年頃になった娘だけで北アルプス縦走を
と、夢みていた。
今は、初めてキスを釣り上げた娘のハシャギ声なんか、
聞こえたりするとイイなぁと・・・
なにもかもかなわぬ夢であるが。
おおきなメバルです。




「確実にデカアジが釣れるぞ」、の誘いに乗った妹は、
ボート釣りが初めてだからとても嬉しそうだ。
闇がすばやく入り江を覆い、
満天の星が透き通った夜空に輝き、
釣れなくても退屈しない。

妹の竿がググッーと曲がった。
しばらくして僕にもきた。
大アジは来なかったが、イイ思い出ができた。


なにを釣っているかというと?
フグです。
妹の友人夫妻たち、みな50歳過ぎ