なんとしたことか


一月に一度の五ヶ所、そして滞在が3、4日間ぐらい、
そんなパターンが続いていた。

五ヶ所に着くと次から次と雑用が待っている。
その雑用がとても刺激的なので釣りはいつも後回し
になっていた。
実際、持てる体力を使い果たし、釣りへ注ぐべき余力の
カケラも残ってないという具合だ。

季節は春爛漫。ラスト日に狙いを定め、釣りの予定とした。
釣りへ残すべき体力配分もうまくいった。
なにしろ半年ぶりの釣りだから、気持ちが踊っている。
念願のオサナサにもどれるかと思うと・・・なおのこと。

雨まじり空模様なのに雨具を忘れてしまった。
メゴチバサミを忘れて取りに戻り、
朝食を忘れて取りに戻り、ハンドル棒を忘れて
取りに戻り、3回もボートを引き返したので
4回目となると、どうでもよくなった。
おかげで雨がパンツまで染込んできた。

天気がすぐれないせいか、海の上は静かだ。
この季節にしては釣り船が少ない。
空前の釣りブームも去り、本来の静かさが戻ったのだろうか。
願わくはこのまま先も静かであってほしいのだが・・・
湾口の大島灯台では視界から釣り船が見えない。
大海にポツンと我のみ。
こんな一人ぼっちが、はるか少年時代の釣りと重なる。
ひと一倍寂しがり屋のくせに独りがイイなと思える。
特に釣りの世界はね。

湾口ではちょうど大潮の満潮で潮が動かない。
アタリはあるが食い込まないし、
送ってダメなら早合わせだと、ガンと竿をしゃくって
乗ったのがカワハギ。
その引きの良さ、てっきりデカ真鯛だと思ったぐらいの
三段引き感触。
こんなカワハギでアタマが真っ白になり、血液が逆流
するくらいシビレルのだから、
まさに、幼児ガエリの極意。

およそ2時間。
キスも釣ったし、真鯛にもお目にかかったし、これ以上
釣っても仕方がないから、海上をドライブしながら潮風を
楽しんだ。
これで小雨さえなければ最高!


カワハギを刺身で食ってみた。
その美味さといったら。
う〜ん
北の爺さんにも食わしてやりたかね

......