出足がかんじん
平日の金曜日。
見渡す限り釣り船なしですから、人影もなし。
広い海を独り占めです。

こんな私、五ヶ所の海で一番幸せな男だなあ、と思います。
もし、携帯電話の脅えさえなければ太平洋で一番幸せな
奴になれるでしょう。

春の海はキス釣りがお似合いです。

きっと季節のせいだと思う。
地上では草木が芽吹き、若い男女には恋の季節で、
少年には冒険が、孤独な老人には海が待っている季節
です。

南の風が強くなってきました。
今年2回目となるシーアンカーの出番です。
無風の海を漂うのもイイですが
このように風に流されるのも
自然まかせでよろしいです。

春は一歩踏み出す季節なんです。

つまづいてはいけないんです。
出足を、くじくようなようなことがあってはいけません。
キス釣りにかぎり、だれもが優等生になれます。
釣れないってことはないからねえ。


引きの強いものが先にくると
後の釣りはつまらなくなります。
つまり、ダラケテしまうわけですね。

今回は、いえ、今回も
竿仕舞いを考えていたときです。
いきなり、予期せぬ興奮に包まれました。

これで終わりとすれば、
絵になるのでしょうが
二匹目のドジョウを狙って
無駄な時間を過ごしましたとさ。
......