いくつ春を数えても

春の釣りはイイ。
釣りを始めるとしたら春がイイ。

今まで いくつの春を数えたのだろうか。
思い出すなあ
春の小川とくれば、コブナ釣りに夢中だったガキ。

そしていま
春の五ヶ所湾とくれば、
キス釣りに夢中のジジイとなる。

今年も春の釣りが呼んでいる。

春真っ盛りの早朝。
今年はじめて、海に出たのです。

竿を出すのもウレシイし、
まわりの景色を眺めていてもウレシイのです。



ところで、
釣りなんてものは、万人の趣味だと思ったりした。
だれもが好んでやるものだ、と思い込んでいた。

だから、みんながヤリタガル世界において、
オレこそが一番イイ思いをしたい、と思うのだ。
もし、知り合いがイイ思いをして、オレが後でそのことを
知ると、もうなんだね、
飯も食えないほど落ち込むのだ。



しかし、よく考えてみると
クラスで釣り好きなんて一握りの成績不良者だったんだ。

それに釣りなんてものは、いろんな釣り方があるんだ。
チヌ(黒鯛)だけでも、浮き釣り、探り釣り、投げ釣り、かかり
釣り、濁し釣り、とたくさんある。
その一つの浮き釣りだけでも、付け餌釣り、団子釣り、
ふかせ釣りとあって、何がなんだか訳がわからないほどだ。

まして釣りは海だけではない。
渓流や河もあって、池や沼もある。
地方により釣り方も変わってくる。

アユ釣りだけに人生を捧げている人々がいて、
幻の岩魚を追って一生を棒に振る人だっている。
まさに釣りは多種多芸に渦巻く世界なのだ。


まさに自分だけの小さな世界を築き、そこに喜怒哀楽を
味わえるなんて、釣りならではの世界と言えそうだね。


五ヶ所湾の片隅で、
もっとも簡単なボート釣りで、
毎年決まって、春のキスにココロを膨らませるなんて
オレはなんと小さく、しあわせな男なんだろう。
と、思う訳さ。





春はやっぱりキスです。

うれしさのあまり
ベチャーッ と、キスにキスしてやりました。



......