写真が少ない のでこれも間 に合わせ。 緑の大木は 山モモの木 |
のびのびと 素人の強みを生かし予備知識もなく、材木屋さんに飛び込んだ。 小さな小屋にしては、木材のサイズがバラバラで種類が多い注文になった。 設計が自己流なので材料も好き勝手サイズとなり、長さも不揃いだらけ。 無知といえども図々しくて勝手なお客に違いない。 海づたいに走る国道沿いにあって、かねてから目をつけていた材木屋。 浅瀬の海が目の前に広がり、積まれた材木以外は視界を遮るものはない。 親方もいたってのんびり、そのものだ。 はじめて訪ねた時は猪狩りの鉄砲撃ちとかで留守だった。 材木は注文通りのサイズに切ってくれると聞いて、途端にうれしくなる。 価格は体積で決められることも、このとき初めて知った。 まじめに注文を聞いてくれるせいか、いささか安く思えたものだ。 材木屋とは海でつながっているので、筏に組んでボ−トで牽引してもいいか なと、ふと思いついたが息子さんが車で運んでくれると言う。 運びこまれた材木のボリュームが想像以上だったため、一瞬ひるんでしまう 。 なにかとんでもないことをしでかすんだな、と胸が熱くなる。 というのも小屋造りなんて、長い間閉まったおいた夢が今現実のものになろう としているのだから。 臆した気遅れを吹き飛ばすために、力をこめて気合をいれる。 「キ−ン」と厳しい音と共に、電動カンナの処女削り。 粗切りの杉材はみるみるうちに、つややかで色っぽい肌に変化し、いままで 見えなかった木目が色鮮やかに浮かび上がる。 人気の無い入り江では大きな音を出しても遠慮なんていらない。 誰にも気がねせず、思い切り「キーン キーン」とカンナを唸らせることが出来 よう。 けっして都会では味わえない贅沢な環境なのに、大きな音につい周りを気遣 ってしまう。 あっという間の油断であった。 木材を固定するための釘を誤って引っかけてしまった。 カンナの削り後には、欠けた刃によって見事に一条のレ−ルを作り上げてい るではないか。 それを削り取るのに、またカンナをかけることになる。 するとまたカンナの欠けた後が残り、またまたカンナをかけるから、どんどん 薄くなってしまう。 ここでこそ味わえる気ままで好き勝手なことができる一時が、大量の削りクズ の中に埋もれていく。 ついでに暗い世相も削り取ってやろうかな。 あまりの贅沢さに、小心なもので落ち着かないのだが。 |