扉は風雨にあって
貫禄がでてきまし
た。
流木の取っ手が
馴染んでいます。
流木

ようやく最終工程にたどり着きそうだ。
屋根を葺き、最後にドアを取り付けた。
ドアをアルミサッシ製と考えたが、ここまですべて手作りでやってきたので木製
のドアが似合いそうだ。
コンパネ板に角材で補強した程度の簡単な物であるが、予想以上の出来栄え
となった。
ここまで妥協しないで来ると、最後の仕上げとなるドアの取っ手も手作りでない
と気が済まない。
仕事仲間の魚釣りに同行して、湾口の田曽浦へ出かけることにした。
まだ早春の肌寒い季節、釣れないと予想の付く「釣り」に付き合うほど暇はな
いし、目的ははっきり流木探しである。
釣りにはやる友人と別れ、堤防釣りで有名な田曽の大突堤を通り過ぎ、波洗
う磯をめがけて先を急いだ。

なんだかどこかで昔出会った光景だな……と、足場の悪い磯を歩きながら過去
の思い出が蘇ってきた。
そうか、 神島だな。
15年ほど前のこと、学童保育で知り合った不良父親たちと「あやしい中年隊」を
編成しワイワイ遊びに行ったところの一つである。
当時は子供をほったらかしにして、ずいぶんあちこちと出かけたもので、いつしか
対馬列島まで行ってしまったほど。
神島の裏手にある中学校のさらに裏手を進んで行くとゴツゴツした磯場が現れ、
我々素人には間違いなしに釣れる予感がした。
はやる気持ちを押さえ、さっそく新調した投げ竿で力一杯投げてみたのであるが、
きちんと錘が結んでいなかったらしい。
投げた途端、いきなり竿が軽くなった。
記念すべき一投目は、大事な錘と仕掛けが、はるか海上遠く飛んでいったきりで
戻ってはこなかった。

餌を付けるのも、もどかしく再挑戦。
「ブッチ−ン」 投げた途端、竿に強い衝撃が伝わった。
リ−ルを起こすのを忘れていたために糸がロックし、あっさり切れてしまったようだ。
またしても錘と仕掛けが、はるか遠くへ飛んでいったきりで戻ってはこなかった。

こうなるともう頭の中がぶち切れても、おかしくない。
必死になって慎重に第三投目、これはうまくいって当たり前。
目指すポイントに納得の着水音、ヤレヤレである。
しばし間をとって引いてみると途端に重くなったから、さあ大変、仲間たちのニヤケ
顔が期待の大注目に。
「ウン」 「ウン」 「ウン」 と竿を力任せにひん曲げるが……しかし、いくら力を込めて
竿を起こせども糸がピーンと張ったまま、ウンともスンとも動かない。
完璧な根掛りであるが当時はあまりにも経験が浅すぎた。
新調の竿ではじめての場所で、たった3回しか竿を振らなかったのに貴重な仕掛け
の大半を失った。

そんなつまらぬ思い出の太平洋の波打ち際で、なんとか気に入った流木を拾うこと
ができた。