棚作り
もし、最初に手をつけるんだったら棚作りこそ優先すべ
きだった。
それはいろいろな作業が要領よく、スム−ズにいくこと
が約束されるからである。
散らかって足の踏み場もないような雑然として道具置
き場。上にどんどん重ねていってやがて崩れ落ちるあり
さま。
こうなると、仕事がはかどらないばかりか、ストレスもた
まる。
たかが釘一本探すのに、どれだけの時間がかかったか
計り知れない。
檻の中の熊のように、見つかるまで同じ所を行ったり来
たり何度もあきらめようとするが、でも、できない。
結局探し疲れたあげく、オノレの無能を罵り、ときには悔
しくて涙ぐんだりもする。
だから、できるものなら最初から道具類は整然としてお
くべきと思うのだが…これが絶対出来ないのだなあ。
どうしても客人の目に写るにつくとこから手をつけてしま
う。
そしてホメテもらいたい下心で優先順位が決まってしま
うのだ。
ツ−バイホ−のパイン材とコンパネ板で
作ってみました。

そんなサモシイ気持ちが一杯だから棚作りなんて、つい
つい後伸ばしになってしまった。
しかし、物造りには虚栄心がつきもの。
欲張りついでに、本来「見せ物」ではない物置まで、こう
してヒケラカソウというのだから罪なものだ。

地下階なので、湿気が想像を越える。
今年のように異常な高温多湿になると、なにもかも
びっしりとカビだらけ。
カンナ、金槌、のこぎりの柄など、木の部分は白いカビ
でビッシリ。金属部分も赤いサビでビッシリ。
なにもかも腐ってしまいそうだ。
そういう教訓から棚は透明クレオソ−トを塗り、万全の
防腐対策をとる。
しかも棚板のサイズが小さ過ぎたのが幸いし通風性は
きわめて良好。
さすが完成した夜は、疲れているのにすんなり眠れない。
何度も「自信作」を確かめたくて、ゴソゴソ深夜に起きだ
したのである。
コンクリ−ト壁に棚柱を固定するアンカ−ボルトを
18本打ち込みましたが、これでたっぷり一日を
要しました。

とにかく、過去をふりかえると失敗の繰り返しで、いわば
棚作りは総決算になる。しみじみ過去を振り返り、今まで
の苦労をかみしめ称えよう。
しかし、この棚作りも最後の最後までてこづった。
計算外の不足分を補うため、往復1時間以上かけて隣
町のホ−ムセンタ−に材料の買い出しとは。
それも一日1回。2日連続とはバカみたい。
完成への執念は半端じゃないってんだよね。
インパクトドライバ−で木ネジを打ちつけました。
その威力はご覧のように軽く頭がめり込んで
いきます。

そんなこんなのドタバタも、完成してみれば楽しい思い出。
うっとり見惚れるほどに疲れも手伝い、とうとう棚もゆがん
で見えた。
「疲れ目か…」
と、目をそむけるが脳裏に焼き付いた映像は消えない。
「いつもの失敗に懲りて何度も寸法を確認したではないか。
 自分を疑ってどうする」
…メジャーを当てて寸法を確かめた時。
何度も経験して慣れているとは言え、メマイらしきものが。
・・・・
深夜も零時をとっくに過ぎたころ。
せっかく作ったものをバラシ終えたのは。
それから、数時間も過ぎただろうか。 「失敗してもクジケ
ナイもんね」と、再びの完成を目前に急に急に明るくなっ
ていくオノレなのね。

これは、だれにもできない貴重な体験です。
選ばれた人のみが許される感動の手応え。
深夜に完成品のヨロコビに二度までも浸ろうとは…。
菜園道具はこれで3回目の引越しです。
全てぶら下げるようにしてあります