ロックガ−デン
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まともな駐車場にするために、今まで何回手を加えたことか。 最初は車一台がやっと。しかも傾斜がきつくブレ−キをしっかりかけないと怖いくらい。 へたをすると海に向かいズルズルと転げ落ちてしまう。 何度もヤバイ目にあったので、改造すべく土止めの柵をこしらえた。 杭を打ちこみ横に丸太を積み上げただけの柵。 土砂を注文して少しは駐車場に近づいたかも。 だが、それもつかの間、大雨であっけなく杭がへし折れた。 杭の本数が圧倒的に足りなかったらしい。功をあせって急ぎすぎた手薄工事の見本。 もっと頑丈な柵が必要なので、出来悪後輩とオロカ後輩の「シロウト人夫」2名を代わる 代わる投入し復旧を試みることに。 もちろん釣りをやらせるといって誘いだすのだが、幸いにも釣りなどやったためしがない。 「アイツでさえヨロコンで来るのに、オマエはどうしてグズるのかね。 ウン?」 渋る後輩をやさしく諭す。 「親の言うことを聞かないガキはあっても、先輩の頼みに耳を貸さない後輩て、世の中に いるかね。ウン?どうなの?」 が、最後のオドシ文句。 すっかり観念した後輩たちの「献身的」な働きもあって、どうにか柵の再生がかなった。 そこに新たに土砂を追加し、以前より一回り大きくなった駐車場。 やれやれ一安心。 頑丈な柵に後輩たちの労苦を偲び、その頼もしさを疑いもしなかった。 ところが、止むことなく降り続いた雨あがり、目にした光景はあまりにも非情。 土砂の圧力に耐えらなかった柵は大きく破壊され、無残な姿をさらして…。 | ||
ずいぶん前置きの長い話しだが、その後、挫折から ようやく立ち直り、いくばくかの反省もし、土砂だけの 土盛り工法に切り替えることにした。 小型ダンプカ−で、60杯を越す土砂を投入したはず である。 でも、その駐車場もやがて新たな小屋造りのため 壊すはめに。 現在の形はさらに土砂を追加して整えたもので一体 何回手を加えたか数えきれない。 それだけ大量の土砂を投入しているので、その結果 とてつもなく広大な斜面(のり面)が出来あがった。 さて、この人工斜面は放置しておくと草ぼうぼうに なって美観的によろしくない。 そこで岩石を配置してロックガーデンもどきを思い ついた。 |
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ザイルさばきが要求されます | ||
幸い、地元の土建業者が岩石をくれるという。 ダンプで2回も運んでくれ、お金は頑として受け取らない。 こうしたことは、金、金、金に染まった都会生活者にとってとても理解できないが、 五ヶ所では何度も経験したこと。 もう、うれしくてうれしくてタマラナイ、ますます五ヶ所の「田舎ぶり」に惚れてしまう。 釣りを楽しみにしていた出来悪後輩が、うれしそうにやってきたのはその2日後。 意気揚揚も一瞬の内に意気消沈。グッタリ。 野積みにされた岩石の山を見て、おとなしく観念した。 風もあるし釣りは夕方まで延期することにして、さっそく工事に着手。 ザイルで岩石を結わえ、斜面を慎重に滑り降ろす。 一歩間違えば岩の下敷にならないとも限らない。 ロッククライミングはこんなときに役にたつ。 ザイル仲間もこういうときは呼吸がピタットと合う。 休憩もなく黙々と夢中になって続けてきたものだから、疲れも極点に達したか。 | ||
そして大概こんなときに、アクシデントが待ち受ける。 「ウギャ−」 悲鳴にもならないくらい痛くて涙がでた。指が岩と 岩に挟まれたのだ。 しばらくジンジンして痛くて仕様が無かったが、 夢中さが痛みを和らげてくれた。 そして痛みを忘れていたころ、またしても反対の手の 指を挟んでしまった。 「ったく、どうしてこんなにドジなんだ」 痛い手を堪えながら、マヌケな自分が自分である ことに腹がたつやら涙が出るやら。 一方、出来悪後輩は腰を降ろそうとして木の枝が ケツにささって泣き崩れる。 しばらくウメイテいたが、傷の癒えるのもつかの間、 今度は足の指が岩石の下敷になって激しく悲鳴を 上げる。 | ||
なんとなくロックガーデンらしく なってきました。 | ||
お互い満身創痍。 夕暮れ近くなって精も根も使い果たし、釣りのことなどすっかり忘れていた。 「明日の朝マズメが狙いだな」と言い聞かせ、「明日は無風だから入れ食い 間違いないさ」と、大きな期待をもたせてその日は乗りきった。 明けて翌朝。 釣りの期待を抱かせてあるから疲れていても早起きだ。 薄明るくなった外では、ほどよい風が木立を大きく揺すっているではないか。 「昼には風が止むから、それまで工事を続行しないか」 空を見上げて恨めしそうな顔をしている出来悪後輩。 最初はぐずっていたが、さえぬ空模様にしぶしぶ納得。 工事は快調にすすみ、風もますます快調に吹く。 | ||
「釣りは夕マズメが一番、いつも夕暮れには風が ピタット止むはず。帰りは遅くなってもいいから 夕マズメに賭けようや」…なだめたり、すかしたり、 まるで気配り上手な労務管理者。 やがていつしかあたりは、すっかり日も陰ってきた。 きっと、天気図は西高東低の揺るぎのない冬型だっ たのだろう。 ケチのつけようがないほど、北西風の勢いをしっかり 保っている。 結局、五ヶ所の風は働く人にはやさしく、釣り人には そっぽを向いたままだった。 出来悪後輩の背中はいつもに増してサミシソウ。 寒風が追い討ちをかけている。 よろけて岩から落ちるとヤバイので、声をかけない ように思いやりをもって眺めていた。 |
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夕暮れ近く、背中に哀愁が。 | ||
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