ヒジキ

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 久しぶりにオロカ後輩と五ヶ所に行った。
 五ヶ所では激しい肉体労働が待っていると覚悟しているようだ。
 オロカ後輩の上から下までの完璧な作業服姿が、それを物語っている。

 あらかたの竹は切った。
 あまりの疲労に、竹の子を見つけても掘り出す気力もない。
 二日目の昼は、飯を食い終わると芝生でたまらずバタンキュー。
 2時間も昼寝するありさまだった。

 これだけ奉仕すれば当分の間誘いを免れるだろう・・・
 帰り日のオロカ後輩は、そういう思いでか、とても嬉しそうで饒舌だ。 
春の海を見ていると、
家のこと、仕事のこと、辛い労働のこと、それらをすっかり
忘れさせてくれるようだ。
「ああ、生きてきてよかった」と、つくづく思うのだろう。

過酷な労働に耐えたご褒美にと、先輩から後輩に買い与えた
アイスクリーム。
オロカ後輩はそれをチョビチョビと、時間をかけて舐めていた。

彼はもう50歳を過ぎている。
「どこから来たの?」
と、聞いてみたら
「愛知県」と、こたえた。
地元の子では無いなと、ひらめいたのが当たった。

狭い船着場を小魚を追って走るまわる。
「どんなサカナが取れるの?」と、呼び止める。
「シマシマのカワイイの」
「ネェネェ オジサンも一緒に獲ろうよ」

タモを渡されそうになったオジサンは、おもわず手を後ろに
ひっこめてしまった。
悔しい・・・
だれも見てなかったらオジサンも一緒に遊びたいのに。
女の子に対する少年時代のテレが
今も生きていた。



ヒジキは中津浜の代表海産物。
運良く、その天日干し作業に出くわした。
ヒジキの下は畳表。
今年新調したと言うから、まだ初物で青々しいし、
ピースサインのオカーハンも、初々しいなぁ。

ときどき口に何かをくわえる。
まるでツマミ食いしてるみたいだと、
からかったら、
「ゴミが小さいしな、いちいち外に放れんからさ」
と、ケラケラ笑った。



眼下に五ヶ所湾。
たっぷりの大型浴槽と、小生愛用の小浴槽があって、しかも
明るい時間はだれもいない。
全部独り占め。
窓を開ければ露天風呂気分に。

そして、
日が傾くころ、茜色に染まった雲を眺めていると、なんとなく
自分の居場所が分からなくなり、
湯船のなかで、
いつのまにか眠ってしまう。