桟橋

 汗ばむほどの陽気。
 春の香りが濃厚で、うれしくて仕方がない。
 しあわせだなぁ
 と、つくづく思う。
 
 あちこち駆け回って、あちこちの草や、あちこちの花や、あちこちの木や、あちこちの土や、
 あちこちの人に触れよう。
 うれしさ余りひっくり返って、背中擦って、
 野山に解放された子犬みたいに。
遠方の建物は南勢高校、手前に広がる海は我が家に続く
入り江です。
浮かんでいるのは、漁協管理のレジャーボート係留施設。
25フィートで年間20万円。
5フィートごとに5万円の差額。

将来のことを思い、妻に内緒で貯金を崩した。
場所の確保を急がねばと・・・

堤防沿いの道が唯一のアプローチ。
高過ぎる堤防が邪魔して海が見えない。
道がカーブして、しかも狭すぎるから海なんて見てられない。
対向車が来たら・・・と、思うとゾットする。
焦ると事故に会いそうだ。

だから、何事も焦らないことにしよう。

駐車下のロックガーデン。
芝桜が目を楽しませてくれます。

土砂崩れ防止を兼ねたアイビー。
その勢いといったら、
妻がチマチマ育てた小花を、次々に飲み込んでいきます。
だから、芝桜も必死です。
陣取り合戦、春たけなわです。

思い出されます。
高校生だった長女が、母の日に贈った小さな鉢のアイビー。
しばらくして枯れそうになって、試しに五ヶ所に持ってきたら
見違えるほど元気になって・・・

「どんどん大きくなってね」と願い、妻が挿し芽で増やします。
それがほんの数年でご覧のとおり。

花屋さんで買うと、小さな鉢付きで500円もするのに、
今ではワタクシに劣らず厄介モノ・・・らしい。


我が家から歩いて10分くらいのところ。
ここは、ひな壇状の穏やかな永住型別荘地である。
海の眺望が約束された場所でもあった。
そのために、住民は平屋とすることにしたのだった。
お互い様だから。

海に面し、立ち塞がるように建った白い倉庫風の建物。
都会の考え方が、そのまま持ち込まれたかのように
威勢がイイ。

「伊勢現代美術館」である。


ステンレス製のモニュメント。
題して「釣り人」とある。

やわらかな海の営みが漂う入り江。
美術館の前庭にあって・・・芸術品と写る。