...若者の海.............

のどかな秋の海を散歩していると
のどかな若者に出会えます。
いつしか若者は旅立っていきますが、それは寂しいようで希望に輝くものでもあります。











広い道路を辿れば水産試験場に着く。
この道路、
天皇家の視察のためということではじめて、
そのりっぱさに納得するのだ。

いつも人気のない道路だが、休日になるとにわかに
騒々しくなる。
ドラムの爆音が粗末な小屋を揺すぶり、周囲に響き
渡るのだった。
夏も冬も、春も秋も絶えることがなかった。

その轟きが消えてもう何年になるだろう。
粗末な小屋と楽器は、しばらく静かさに包まれたままだ。

青春ジャカジャカジャーン。
あの熱きドラム青年は
いつしか都会に旅立ったのだろうか

青春ドンドコドーン。
今一度聞きたいものだ



















高校の脇道を通って我が家に着くのだが、いきなり着い
ては味気ない。
学校手前の交差点でノロノロ運転に切替える。

運良く、ダラシナク歩く高校生たちに出会えたら
チャンスだ。
アイスクリームを持つ手はあっても、カバンを持つ手は
ないような若者たち。

歩きながら厚化粧を重ねたり、
登校時間が過ぎても急ぐ様子もなく、
女子に脅され、オンブさせらている気弱な男がいたりで、
見飽きることがない。



駄菓子屋さんはこんな高校生の溜まり場になるのだろう。
菓子類が所狭しと並び、長椅子も用意されている。


いまの店主さんは二代目。
東京に住んでいたが、
10年前に先代の亡き母から店を受継ぐため、
生まれ故郷にもどった。
これからの老後を高校生相手に過ごすのだという。

「この10年で生徒さんも随分変わりました。
躾の出来てない子が増えたように思います。
でも、みなカワイイ子たちですよ。」

悪いことをしたら悪いとハッキリ教えるそうだ。
鴨居の上に飾りものを見つけた。
修学旅行のお土産にと、生徒たちがくれたものだった。


「卒業してから何年かして訪ねてくれる子がいたり、
結婚したと知らせてくれたりすると、うれしいです。」

先代から変わることのない店構え。
高校生にとって駄菓子屋さんは
青春のページを刻むものとなっていた。













対岸を散歩していたら
海面を伝って明るい笑い声が聞こえてきた。

単調に伸びる堤防の先にに女の子が二人。
そこは普段から人気のない所だし、
女の子のハシャギ声なんてありえ様がなかった。

純正地元産の女の子、
高校一年生たち。


将来のことを聞いてみた。
一人は、将来外語大学へ進み、それを生かした職業に
つきたいと、
もう一人は看護の学校へ進み、看護士になりたいと、
目を輝かせた。

じゃあ将来故郷にもどってこないのかな、
と聞いたら
「ここでは、就職先がないから・・・」
 と、少し寂しそうに答えた。

君たちが去ったら親が寂しい思いをするのじゃないか、
とたずねたら
「 ・・・  」
言葉がなかった。

話題を変えてみた。
君たち、もう彼氏いるのかな?と悪戯な質問だ。
すると、
「この15年間1回も ありませんでした」
先ほどとうって変わって
キリリと力強い言葉が帰ってくるのだった。