下調べこそ肝要
本筋のまえに、ちょっと一服。

聞きかじりですが・・・
雑木林風庭園は今、ちょっとした注目を集めているようです。
国土のいたるところ、都市化の波が襲い自然がバカスカ、
バカスカと消え去ろうとしています。
あと釜に何が来たかというと、車とハコモノの洪水。
都市化に寄せた期待と興奮は、やがて急速に色あせていきす。
造っては色あせ、色あせては造り・・・終わり無き悪循環の連鎖。

というのが背景にありますね。
で、案外、昔のほうがマシだったんじゃないか、
贅沢は言わないから自然を元に戻してほしい、
てなことが、広く囁かれはじめました。

そこで登場するのが里山の光景。
失ってはじめて、その価値の大きさに気づきます。
雑木林を縦軸に、田園が横軸に織りなす日本の原風景。
雑木林は、長年に渡りコツコツと人の手によって守り育てられた
といわれています。
放置されジャングル化した自然とは、同じではありません。

これを知った吾が主人、「わが意を得たり」と、小躍りします。
考えかたが短絡的でありますから、そうと思ったら一直線、
「雑木林を庭に」を目標に突進していくのであります。

さて、その雑木林ですが
名前のとおり雑然といろんな木が育っています。
針葉樹林のような単一人工林と違い、多彩な落葉広葉樹が
混在しています。

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主人の狙いは絞られました。
「多種」な「落葉樹」に全財産を投じよう!
土地が足りなければ貯金を下ろせ! 生命保険も解約だ!
離婚の脅しに屈服するな!・・ってな按配でして。


ハズミがついた主人は、これでもか、これでもか、と土地拡大と
安物(値打ち品)苗をと、買い走るのでした。
いつしか収集マニヤへと飛躍していきます。
いったん勢いに乗ると、留まることが出来ません。
シーズンオフの半額セール期間は、充血した面玉で
あちこちの園芸店の査察に出かけます。


さて、つぎつぎに買い求めた苗木ですが、吾輩のように
着いたその日に移植されるほうは、まだマシです。
植えて後しばらくして引き抜かれ、そのまま数日放置だった、
なんてことがありえましょうか。

何事も下調べが肝要です。
充分な調査を怠った結果、どうなりましょうか。
先輩苗木から、いくつかの悲劇を聞かされました。

まず、ネジキという種族のお話。
このネジキは、もともと五ヶ所にはたくさん生えていますから、
園芸家でしたらすぐに判別できます。
いわば自生ものというやつです。

吾がご主人、エンゲイカですから、収集に夢中です。
嬉しそうに苗木を買ってきて、それから、バカ穴掘って、
腐葉土すき込んで、ワラを敷いて、添え木して、水をたっぷり
やって・・・。
「雑木林」に新たな一員を加えたと、大ヨロコビでありました。

ところが、あれから4ヶ月後。
春は青葉の季節。
苗木から芽吹いた葉っぱで、何の木か判別できる時期です。
主人は、あっちへ行ったりこっちへ来たりで、さんざん睨んだ
あげくにヘタリ込みました。

目にしたのは、あたり一面のネジキ、ネジキ、ネジキだらけ。
でもって、苗木もネジキだったのです。

よっぽど悔しかったんでしょう、しばらくそのままでしたが、
結局、ネジキの苗木を引き抜くことになりました。
引き抜かれた苗は、いずれ移植する予定で木陰に放置された
ままです。
あとがどうなったか、
そのまま放置され忘れ去られたと、噂に聞いています。

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あれからおよそ1年経過。
主人が探し探しに求めて幾千里、スカウトよろしく手にいれた
カマツカです。
マニアにとって貴重な一品です。
吾輩と同様、特待生優遇で迎えられました。
枝先に小さな白い花を咲かせています。
別名を牛殺しというほど強靭な木で、雑木林の代表格でしょう。

主人はいつになく喜び、いつものようにバカ穴掘って、
腐葉土すき込んで、ワラ敷いて、水をたっぷりやって、
ふと手を止めました。

「小さな白い花・・・?」
主人は、その小さな白い花のついた枝をポキリと折りました。
それを手に持ち、敷地の反対側に走っていきました。

大きな木の下でうづくまっています。
小さな白い花がいっぱい咲いてる大きな木の下です。

主人のへたり込む姿、
一年前と同じ姿がありました。




後輩たちを五ヶ所に誘いました。
そして近くの「里山」を散歩しました。
ブラブラ見学しながら、庭構想を学ばせます。










さぞかし「先輩の庭構想」に感銘したでありましょう。
その証として、さっそく
庭仕事を実践することになりました。

汗する量に比例して、その土地に愛着が深まります。












庭構想の思案に浸る主人、
忠義な後輩たちに恵まれ満足そうであります。


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