振り向かない

吾が主人が憧れる雑木林風庭園、
どこかに見本はないものか、と思案にくれます。
ナチュラルガーデンと題した雑誌類は本屋さんに山ほど
あります。
掲載されている庭はどれも、とてもお洒落なので、人気の
ほどが分かります。
「でも、違う、なにかが違う」
主人は、すなおに頷けないようです。

「もっといい加減というか、
 おおらかな雑っぽさに惹かれるのだがなあ・・・」
瞼に焼き付いている昔日の自然です。

いつも通う図書館に、インスプレーションに重なる本を
みつけました。
そして、作者に敬意を払うために買い求めました。

■ 花鳥風月の里山 柳生博の庭園作法

 ターシャ・テューダーの庭
■ ポール・スミザーのナチャラルガーデン
■ 田淵義雄の森暮らしの家


ところで、これらに登場する庭はとてつもなく広いのです。
八ヶ岳倶楽部は数千坪あるし、
ターシャ・テューダーの庭は30万坪もあります。

主人は軌道修正ができません。
進むべき道は「雑木林風庭園」。
悩みは続きます。
土地を拡張したいならば、離婚の危機を招かないよう時間を
かけ、いくつもの段階を経なければなりません。


さて、
吾輩は先刻ご承知のアオダモです。
同族は総数で7名、いえ、7本となります。
先着順では吾輩が最後の苗木でして、
もとからとあったものが2本、苗木で購入したものが5本という
新旧混在の一族です。

なぜ、こんなにもにアオダモだらけになったのか、というと
やっぱり「雑木林風庭園」にありました。
単一樹種を、一定場所に集めておけば、より自然っぽんじゃ
ないかと、そんなタクラミでありますね。

しかしこのタクラミ、主人がお勉強で得たパクリです。
信念なんて最初からありませんから、怖いです。
アオダモが増えすぎたといって、今じゃ厄介払いですから。
すぐに熱くなって、やがてすぐに冷めます。


熱くなるといえば、
主人が最近、熱く自慢したがる一つに、「株立ちのトリック」が
あります。
ちょっと長くなりますが聞いてください。

株立ちとは、根元から沢山の木が出てるのを想像できましょう。
根元近くの木を切ると、多数の枝が芽生えます。
数年後その枝が成長し、りっぱな株立ちになります。

炭焼きのために活用されるコナラやクヌギが代表格。
古来から、繰り返し伐採し再生されてきたものです。
里山の雑木林は、見事な株立ちで満ちています。
里人の手によって里山の自然美が維持されてきたのには、
驚くほかはありません。

里山の自然美は即席で創れないことが分かりました。
だから株立ちの苗木も、長い時間と手間をかけなくてはならず、
値段が高くなることが分かったのです。


しかし、一見、株立ちの苗木と思っても実はそうでなかった、
ということに気づいたとしたら・・・穏やかではありません。
主人が見破るに至った偶然とは何だったのでしょう。

夏の暑さが峠をこえたころでした。
数本延びた株立ちのうち、一本だけが枯れてしまったのです。
さらに強風で、いとも簡単に、土中の根元で倒れてしまいま
した。
ここで主人はハッと気づいたのです。
根元が繋がっているなら、こんなことありえないことだ、と。

「業者は複数の苗木を集めて1本の木のように育てたんだ、
 シロウトには本物の株立ちと見分けがつかないし、
 そんなこと、どの教科書にのってないことだし・・・」

そしてまたまた気づいたのです。
おなじ株立ちのもが、店によって半額だった訳が。

安さを求めて幾千里・・・思い出しますね。
安い苗木が大量に出回ってることに興奮したこと、
高いものを衝動買いして後悔したこと、
安ものを目利き買いだと、得意満面になっていたことを。

振り返れば、高いものは高い理由が、安いものは安い理由が
あった訳です。
だけど、主人は決して後悔などしません。
「些細なことに後悔していてはエイゲイカへの道は遠い」

土地拡大に苗木への出費、
エンゲイカの迷走(暴走)は、止まらないことになっています。



ニワカエンゲイカにとって本は貴重です。
絵と写真が多いのは嬉しいことです。
私が前々からぼんやり夢に描いてたことが、
見事に実現されていました。

師匠に巡り合えたヨロコビ、
新しい生き方に、身震いします。



株立ちの苗木は高価。
そう思い込んでますから、添え木でしっかり養生しま
すねん。

高価なものと思ってますから、自慢したくてね、
名札までつけましたねん。














........