入魂ベッド

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正月からつづく五ヵ所の休日は忙しくて慌しかった。
時があっという間に過ぎ去り、夜の時間も惜しまれます。

一つのことを続けていると、いつのまにかコダワリの虜になって
しまいます。
寝ても覚めても頭の中はそれしかなく、まるで夢遊病者みたい。
一旦、場所を離れてるのはとても大事なこと。
今までの関心ごとが見事に消え去ります。

いわゆる遠隔地リセットでしょうか。
五ヵ所にいれば都会生活の煩わしさから逃れ、都会にいれば五ヵ所の
脅迫的作業から逃れられる。

交互にリセットを繰り返します。
今ではそれは
肉体と精神の健康にとって必要不可欠となっています。





ベッドのお披露目でございます。
この製作のためずいぶん白髪が増えました。

素早く仕上げることに腐心し、時間に追われてるように
作業を続けました。
他にやりたいことが沢山あって、ベッドにいつまでも関わって
いたくなかったのです。

途中で何度か後悔しました。
こんなに時間がかかるとは予想もしなかった。もしそうだと分かっ
ていたならネットで安く購入するんだった、てね。

材料費だけでじゃなく、新たに購入した大工道具も半端じゃあり
ません。
あれよあれよと出費がかさみます。
ベッドなんて簡単に造れるわと、タカをくくっていたのがやがて
泣きをみることになったのです。

さて、ワタクシ専用のベッドは宮付であります。
棚はコップや本を置くのに便利。
寝床は「思案」の場ですから、頭の上にモノがないと寂しいのです。







オカーはんのベッドは宮がありません。
宮が無いのには訳があります。


いつも「ワーワー」と、
昼夜途切れることなく「ワーワー、ワーワー」と、
大きな声が飛んでくるのが辛いと、
オカーはんは申します。

だれかの無遠慮な声が頭の上にのしかかって
毎日耐えているのだと申します。

寝るときぐらいは静かになりたいと、
せいぜい寝床ぐらいは、頭の上に何も無くをすっきりさ
せいと申します。


オカーはんをいたわってあげたい。
ボクは最後の力をふりしぼり、宮棚の替わりとして
サイドテーブルを造ってあげたのです。












ベッドが完成したら次の作業です。
歩道沿いに溝を掘り、電線をはわします。
電線はフットライトのため、
夜には足元を照らしてくれます。

しかし、溝堀りの手ごわさといったら半端じゃありません。
赤土の上を、重機が何度も往復したから硬くなって、
まるでコンクリートみたい。
おもいきり振り落としたツルハシなのに、土に食い込みません。

ここまでは想定どおり。
かつてツルハシの柄を折った経験は無駄ではありませんね。
前もって買っておいてスコップ破つり刃の有効性を、
確かめるチャンスです。
電動ハンマーに装着し、さて実力はいかほど?


ぐふふ 
腹の底から笑えて。

ダダダダッ
小気味よい振動とともに、スコップの刃先がグイグイ
食い込んでいきます。

溝堀りは全長で70mになりました。
わが「土方見習い人生」の、最良の日であります。













土方作業も一段落し、
新しくできた庵でくつろぎます。
新築後はじめて湯を沸かし、コーヒーをいれました。

窓の外は船越の漁村と眩い海、
たくさんの訪問客に楽しんでもらいたい風景です。

春は忙しくなりそうです。