国境なき鹿団

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鹿とのせめぎ合いは、一進一退を繰り返し、
留まることを知りません。
警報センサーの効果も色あせてきました。

いったいどうすればイイのか、
悩ましい限りです。

自然界は老人を甘やかしません。
鹿の執拗な挑発は続きます。

逃げてはいけない。
老人よ大志をいだけ!

「Old Boys be ambitious !」




お隣のログハウスです。
敷地は頑強なフェンスに囲まれています。

最初に見たときは正直おどろきました。
荒れた湿地が一変し、見事な邸宅に生まれ変わったのです。
さらに、 家庭菜園コーナーをネットで囲い、海側には潮風を
塞ぐためのサッシを設えています。
まさに鉄壁な防衛体制と言えるでしょう。

4年ぐらい前でしょうか、
まだ鹿とか猪の被害が少なかったころです。
当然、鳥獣対策なんて頭に浮かぶはずがありません。

ご主人の用意周到ぶりに、理解が追いつきませんでした。
お話してみると、予想外に普通で温厚なお人柄。
念願の別荘が適ったはずなのに、完成してまもなくのこと、
人づてに、他界されたと聞きました。
これからのおつき合いが楽しみだったのに、残念です。


今は奥さんが、月に何度か通われています。
野菜や花が絶えることがありません。
頑強なフェンスに囲まれ、安心しての畑作業でしょう。
見事な菜園を、うらやしく眺めるほかありません。

お隣の先見の目に、感服です。









お隣に学んで、フェンスらしきものを考えました。
ただ、我が家の敷地の周囲は円形で、
起伏だらけで、しかも道路に対し急な崖となっています。
一体どうしたらいいのでしょう。

一月に4〜5日間の滞在、およそ3ケ月間の短期決戦。
すばやく仕上げるとしたら、柵しか思いつきません。
廃プラスチック製杭が脳に打ち込まれました。

発作的に杭の穴を掘ってみました。
もう一つ追加で穴を、さらにもう一つ・・・

深さ4〜50cmの穴掘りは、昼夜問わず続きました。
次の日も次の日も続きました。
木の根や岩盤は根性で取り除きました。













あと一つ、それを掘ればお終いにしようと、
そのあと一つが、いつまでたってもあと一つでした。

そして、掘られた穴に廃プラスチック杭を挿入し、コンクリートを
流し込みます。

消費したセメントが8袋。
砂袋は、およそ30袋。
連日こればかりしていると、体の隅々まで傷んできます。

朝起きると、
首を曲げると痛くてじっと静止、腕を上げると痛くてじっと静止、
腰を曲げると元に戻らなくて静止・・・まるで廃人。

廃人と廃プラスチック杭で、納得のものができあがりました。






駐車場からの出入り口。
門柱を建てました。

門柱の材料は2年前に切り倒した椿の木。
残しておいて良かった、こんな使い道があったとは
嬉しくなります。

クレオソートを2回塗って、土に入る部分はさらに
コールタールを塗ります。
コダワリですね、
防腐ひとつにも、納得しないといけません。

門柱間は3mmのステンレスワイヤーを張りました。
上下3段で、取り外し自由にしました。

まあなんですね、鹿にとっちゃあ、こんなもの甘っちょ
ろいでしょう。

でもね、左端手前の警報センサーをご覧ください。
これとワイヤーを組み合わせ、二段構えのバリアと
しているのに、お気づきになりましょうか。

人が通る所なのでシンプルにしたいし、
バリアの威力も出さないかんし、
とにかく難儀するんです、何もかも。













正門に仁王立ちしているのは胴長ボク。
ようやく門柱が建ちあがって、やれやれです。

この門柱なんですが、
近くの材木店から買った檜の丸太です。
皮を剥ぎ、サンダーで磨き、防腐塗料を塗りました。

問題はその作業中のことでした。
2本の内、1本が虫食いでかなり腐っていたからです。
新たに買い足そうか、それとも腐ったところを剥ぎ落とし
防腐処置のほうがイイかなあ・・・どうしようかと悩みます。
制限時間も迫っています。

ワタクシ、ヤリナオシこそが人生そのもので、
いつも途中まで行っては、振り出しに戻ってしまうのです。
一旦不安を覚えると、先に進めなくなるのです。

そういうときは決まって、
だれでもいい、こういうときに決断のきっかけとなる知恵を
与えてくれ、と願うのです。


真昼間からです。
「ケーン ケーン」
鹿の甲高い鳴き声が入り江に力強く響き渡りました。

迷ったらあかん、時間がない!

「Old Boys be Don't stop !」