ガウディと共に


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一つのことが頭から離れなくなる。
ひどいときは、朝から晩まで思い詰める。
思い詰め過ぎると、夜中にさえ目が覚めてしまう。

四六時中思い詰めているから、他の事が目に入らなくなる。
関心はただ一つ、他はどうでもよくなる。

想いは時間とともに膨れ上がり、今にもパンクしそうだ。
発狂の一歩手前。

病気です。


その関心ごとが、
シラ材。

船を揚げ下げするスロープ用滑り材のことを言います。
いわゆるコロ材、材質で呼び名も変わります。

15年前になりますが、当初は丸太を使いました。
ロープで結び、縄梯子スタイルです。

舟の滑りが悪いので、しばらくして塩ビパイプに
変えました。
しかし、やはりスッキリしません。
滑りもそうですが、ゴミの付着に悩まされます。
海面を漂う大量のゴミが、北風に乗って押しよせて
きます。
それらを縄梯子が捕らえ、離さないのです。

いい方法がないものか。
ネットで調べ始めたのが2年前。
ちょうどシカ対策が始まった頃です。

高剛性のプラスチック樹脂製のコロ材を発見。
製造しているのは二社だけ。
シラ材種類の豊富な一社と交渉開始です。


ここまでは、シツコサさえあれば容易にたどりつけます。
問題はお金。
それからシラ材をコンクリートに固定する方法。

お金は稼げばなんとかなる。
いいえ、ならないです。
なる訳がないっ、 あまりにも高過ぎる。

しかし一歩踏み入んだ世界です。
簡単に退いては、田舎そだちに傷がつく、
ケンキュウに要した時間も無駄にしたくない、
とりあえず、お金の問題は先送りにしましょう。
先送りは、これを得意としているお国に見習うのです。

シラ材が埼玉県の工場から届いたのが5月の連休。

コンクリートに穴を空け、ケミカルアンカーを
取り付けます。

一本のシラ材に3ケのアンカーを取り付けます。


その間、得意技となったホームセンター巡りして
施工道具のケンキューも怠りません。

コンクリートに固定するにはアンカーが必要。
従来からやってきた方法が打込みアンカーです

今回使用するのは、接着樹脂の化学反応を利用する
ケミカルアンカー。

ケミカルアンカーは、いろんな点で優れていますが、
専用の工具が必要で、値段がこれまた高い、のがネック
でしょうか。










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レンガ色のシラ材が並びます。

舟の滑りを確かめ、嬉しさをかみ締めております




スロープ脇に積んだシラ材は、予想以上に大量です。
少ない滞在日数で全部取り付けると、来年になるかもしれ
ない。
階段工事を依頼した工事屋さんに、手伝ってもらうことに
しました。

一歩踏み込んだ世界は立ち止まりません、
とことん突き進みます。
シラ材取付け工事の見通しがつくと、さっそく次の段階です。

何の段階かというと、舟を起こして洗うための工事。
完成した階段の壁を見て、ヒラメキました。
長い間眠っていた企画が、にわかに沸き上ってきたのです。

とにかくこの15年間、
今まで何が辛かったかというと、舟を起こして洗浄するのが
一番辛いこと。
釣りを終え、疲れた体には、重い船はこたえます。
ウインチで舟を起こしたいとの念願が、今、叶えられるのです。


さて、こうして希望通りになってくると、最後の関心ごとはただ
ひとつ、一緒に遊んでくれるゲストです。

その前にお断りしておきたいのは、ワタシクシには夢があり
ます。
その夢とは、孫娘(まだ生まれていませんが)と一緒にボートに
乗ること、世界のだれよりも美しいシーンに酔いしれること。
それまで、孫娘以外の人とは、ボートに一緒に乗りたくないの
です。

となると、ゲスト用のボートを用意しなくてはなりません。
躊躇しません、どんどん突き進みます。
新たにボートを買い足しました。




さて、ボートは買ったものの、いつも地面に寝かせておくわけ
にはいきません。

階段の壁を利用して
ポートを引っくり返してみます。
滑車を使い、ウインチで引っくり返すので
力が要りません。

舟の中の洗浄が苦にならなくなりました。
立ち止まりません、どんどん突き進みます。
コンクリート床の延長追加工事を依頼します。
そうなると、ボートを寝かせるシラ材も必要で、一回目の追加
発注しました。


ところで壁に添って立てたシラ材ですが、
最初は木材、高価で腐りにくいレッドシダー材でした。
しかし、やっぱり滑りが悪すぎた。
一度気になったことは、繰り返し気になるもので、とうとう外した。
ついでに、アンカーのステンレスボルトも切断しました。

自分のオロカさを責めません、どんどん突き進みます。
プラスチックシラ材の滑り良さが忘れられなく、
とうとう2回目の追加発注をしました。














この間、家の土間改修工事、排水工事、犬走りのコン打
などの追加の依頼工事がとめどもなく続くわけで、
変更工事も繰り返しあって、作業は止ることはありません。

追加の流れはできあがっています、どんどん突き進みます。
車道の補修からカーブミラーの取替まで、何でもアリと
なりました。


そして、それらの最終段階が歩道工事です。
これなど思いつきの最たるもので、これにて終りであってほしい、
と・・・関係者は思ったかどうか。

「モグラとミツバチが崖を崩すので、そこだけコンクリートで
 固めてみたらどうかなあ」
私のただのツブヤキでした。

ワタクシのツブヤキに、ニコニコ顔の工事主任がこたえます。
「コンクリートで壁を造るなんて朝飯前ですって、
 重機がまだある今なら安くできるし・・・」

それからしばらくして、ニコニコ顔の工事主任が、さらにニコニコし
「コンクリートじゃ品がないじゃないですか、
 きっとあとで気に入らなくなりますよ、壊すでしょう、
 それだったら最初から、自然石で組んでみたらどうですか」

もっともだ
高い見識に、うなづかずにおれまい。
英断を下します。
こうなればヤケクソだ、どんどん突き進みます。

一月経って、仕上がった石垣を見て感動です。
なんと素晴らしい!
これは芸術だ!

感動は全てに勝る、、どんどん突き進みます。

もっと石垣を延長したいと、
さらなる追加を依頼をしたのでありました。



手前の砂利道の部分が追加工事です。

右の手前に大きな石があります。
腰掛用ですね。
奥にも大きな石が立っています。
いわゆるオブジェであります。








階段を下りる通路です。
以前とは様相が一変しました。

一体ここは、どこ?ってかんじ



石垣の全容です。
ニコニコ工事主任の渾身作です。
わざと曲がりをいれ、遊びのココロも随所にあって、
スペインのガウディを連想させるではありませんか。

ただ、ここだけの話です。
石垣を少し積んだところで、ワタクシが
必要以上に褒めたのです。
「素晴らしい!あなたの才能は芸術だ、
  完全に任せる、好きなようにやってもらってケッコー」

ですから、この作品は
志摩のガウディと、バカ依頼主との巡りあわせがなければ
誕生しなかったことになります。

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