草食系


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世の中、体育系が影を潜め草食系が目立ってまいりました。

五ヶ所でも草食系がどんどん増え、いまや過密状態と言えましょう。

めでたいことです、いえ、悲しいことです。




五ヶ所に来ると、まず確かめます。
鹿の足跡。 鹿の糞,
それから喰われた花木。

敷地内を見て回った後は、いつも決まってめまいがし、
落ち込みます。

ワタクシは弱虫です。
一見タフそうですが、くじけ易く泣き虫です。
そのかわり、コツコツと体を動かすのはイヤではあり
ません。
蟻とキリギリスの蟻さんです。

さあ、蟻さんを思い出そう。
希望を捨てずに汗を流すのです。

最初は一条。
その次は二条、その次は三条。
気を取り直して四条、涙をぬぐって五条。

奴らが通過する度に有刺鉄線がたわみます。
その度に補強し、ついでに一条づつ追加します。

最初の春から三回目の春を数え、ついに
八条(八段)になりました。
















春先に植えたばかりのユリが被害にあいました。
青い芽が刃物で切り取られたように齧られました。

オカーハンが大切にしているユリ。
落胆ぶりが伝わります。

さっそく鵜方にあるホームセンターへ出かけました。
金網と、ついでに家電屋に寄ってラジオを買いました。

杭を打って、金網を巻きつけての応急処置です。
こんなものを全部で6ケつくりました。
苦労します。



  













ラジオはいろいろ種類を変え、6台用意しました。
警報センサーは音で脅かすのが売り。
不意にアラームが鳴ると、人間だって腰を抜かします。
しかし、鹿には通用しませんね。

というのは、
効果があるのは最初のころだけ。
音が鳴るだけ、じつは安心なのだ、と学習したようです。
こうなると奴らは、とたんに態度を変えます。
仕返しなんでしょう、
センサーエリア内で、次々と糞を垂れ流していきます。

こんなことが、世の中にあるんでしょうか。
あるんです。
仕返しを考えるのは人間だけのこと、と思うと大間違い。

ワタクシも鹿を見習います。
仕返しの仕返しです。
警報センサーの隣に、穴のあいたボックスを用意しました。
ボックスのなかにはラジオが入っています。

新手のオドシ。
ボリュームはもちろん高め。









三日目の朝。
名古屋へ帰る朝です。
大きな足跡に言葉がでません。

グラジオラスの花床が、無残な姿に変わって・・・
昨日、球根を植えたばかりなのに。

この場所は、取り付けたばかりの警報センサーが働いていま
した。
「夜中に警報が鳴っていたわ」、とオカーハンが言います。
しかし、ボクは肉体労働の疲れで熟睡中でした。

グラジオラスの花は、幼きころの故郷を思い出させてくれ
ます。
花言葉は、近所のオバチャンたちのやさしさ。














五ヶ所での滞在は、ほとんどが鹿対策に費やされます。
「専守防衛」はしばらく続きます。
あと、しばらくです。 2年です、2年。


最近は、
車のヘッドライトに浮かんだ15頭の群れが焼きついて
離れません。

夜中に来ると、道中必ず鹿に出くわします。
今回もサニーロードで親子を発見、
高校のグランドを過ぎてすぐに親を、
いつもの原っぱで二組の親子を、
計3回も目撃しました。

鹿の密度が日増しに濃くなっているのは間違いありま
せん。
なんだか、鹿との追いかけゴッコが生きがいになりそうで、
退職後が楽しみで、ワクワクしてきます。

楽しみといえば、これも忘れちゃいけません。
竹の子が出てきました。
いつもより早いのかな。