渾身の柵 |
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定住のあかつきにはアレをやろう、コレをやろう、 アレもやろう、コレもやろう・・・想いははちきれんばかりだった。 長く暖めてきたプランの山。 次々と実行の火ぶたが切られるのです。 嬉しさのあまり病気にならないかしら。 初戦が大事です。 まずは、もっとも手ごわいと思うプランに挑みましょう。 これを突破しないことには次の展開がありません。 次の展開にこそ、田舎暮らしの旨みが詰まっているはず。 季節は待ったなしです。 |
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海に向い傾斜のある畑です。 いや、もと畑だったと言ったほうがいいかな。 10年以上もほったらかしのままですから、耕作放棄地と いってもいいでしょう。 一月に一度、それも三日〜四日の短い滞在では、ろくなものが できません。 それでも15年前には、トマトとかキュウリなどが実り、 まぐれにも小玉スイカも口にすることができました。 しかし、それもつかの間の収穫で、天敵の出現で中断することに なりました。 そうです、天敵とはカラスのこと、 おっと、それだけじゃあありません。 モグラもいましたっけ。 まだそれらを相手にしている間は多少の余裕がありましたね。 緊張が迫ったのが4,5年前、 最強の天敵の出現です。 それも大群ですよ。 シカにイノシシ。 この最強の害獣に占拠された畑を、いかに奪取するか、 少しでも油断すると、一夜にして悲劇を招くことになるのです。 そもそも耕作放棄地といっても、頭のなかでは土壌改良中で ありまして・・・ 少し説明せねばなりませんね。 背が高く成長した雑草を刈り取ることにより、いろんな雑草が 茂ります。 多種多様な雑草が根をはやし、それによって土壌成分が豊かに なるんだと、本に載っていたのです。 いわゆる不耕起栽培。 雑草の力を借りて、生きた土地に改善していくわけで 科学的にも説得性があり、やりごたえがありそうです。 無肥料、無耕転栽培は、ぜひやってみたいと思いました。 それは今から15年以上も前の話。 TVなどで話題になった青森の無農薬リンゴ栽培家、 木村さんの、ずっと前のことになりましょうか。 さて畑は海に向かい傾斜のある土地。 保水性はきわめて悪く、しかも北西の下り勾配。 しかもです、工事車両でガチガチに踏み固められた土です。 作物を植えるには、これ以上のない最悪の条件でしょう。 大雨が降ればすぐに流れ去ります、ついでに土砂も持ち去ります。 夏は夏で、強烈な西日は容赦なく土地を焼き焦がします。 この難題に救いの道はないものか。 雑草を求めて西へ東へ、北に南に幾千里。 名古屋の矢田川河川敷の雑草を車に詰め込み、何度も畑に すき込みました。 あるときは五ヶ所のアチコチを、雑草の収集のために徘徊した こともありました。 願いは天に届いたのでしょう。 やがて種が芽を出し、畑はまさに雑草で覆い尽くさんばかりに なったのです。 おかげで土壌は改良され、ツルハシが跳ね返るほど硬かった 土が、ウソみたいにホクホクとなりました。 大雨なんて怖くない、夏の日照りだって雑草が地温を下げて くれます。 定住後には、いろんな野菜が作れるんだ、 と胸を膨らませていたのに、 肝心の雑草を食い尽くすヤツが現れました。 この数年で畑がすっかり荒れてしまいました。 雑草で覆われていた畑が、いつしか裸地になろうとしています。 (うむ 世間では逆の言い方するのかな 畑を荒らさぬために雑草を取らねば、と聞きますね) 畑を守ろう、 そのために雑草を守ろう、 そのために害獣の侵入を許さないのだ。 定住し、時間は保証されました。 あとはヤルしかありません。 |
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畑は庭の中にあります。 したがって同じ柵を設置するにしても美観にこだわりたい と思いましたね。 そう 「 美しき五ヶ所には 美しき柵 」が似合います。 いろいろ考えた結果、樹脂被覆パイプを使うことにします。 市販サイズは28φと、やや細いので33φの太物を ネットで取り寄せました。 難しいのは接合部です。 斜面に設置する以上、知恵を搾り出さねばなりません。 パイプの土中深さは60cm以上、もちろんコンクリートで 根巻きしました。 さあさあ、じっくりご覧ください。 構想から3年、製作に数百時間、製作費は・・・?万 渾身の力作です。 |
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パイプのフレームが完成したら次はネットを張ります。 黒色のネットは透明感が高く、存在に気づかないほど ですね。 防鳥専用で3cm角ですからヒヨドリやムクドリにも 効果があるといいます。 ただ、購入の最小寸法が18m×18mで、畑全体を 囲っても半分以上も余ってしまいました。 かなり丈夫で、耐用年数が10年以上なのも頷けます。 写真に撮ると写らないので、雨後の水滴がネットに たっぷり付着しているときを狙いました。 正直、このネット張りも簡単にいかず泣かされました。 斜面に立つパイプフレームにパンパンに張ろうなんて そもそも無理があるというものです。 しかし、やってのけました。 渾身の力作です(くどいですが) 何度も言いましょう、いえ、言わせてください 渾身の力作です。 さあ、夏野菜の苗を植えましょうか。 せっかくの「渾身の力作」ですから、はりきってます。 が、ときは五月の中を過ぎました。 ホームセンターの園芸コーナーには 売れ残りの苗しか見当たりません。 「仏作って魂入れず」 いたってワタクシ的です。 |