カラス対策と
して次の年は
竹を組みネッ
トを掛けた
盗賊

食い切れんほどプリプリに熟したであろう…期待に胸をふくらませ3週間ぶりに
駆け寄ってみると。
たわわに実った真っ赤なトマトが、都会生活を抜け出して早う来いと誘うた。
前に来た時はほんの少し色ずいていたから、きっと今が熟れどきのはず。

あれえー?
赤色のトマトが見当たらない。 いったいどうしたのだろう。
自分を待ち望んでいるはずの希望の赤い星が消えている。
なんということだ。
事の成り行きを整理しようにも、ショックの大きさで頭に血が回らない。

さては盗人か。
夏の強い日差しはやがて頭の血管を膨張させ、血は一気に煮えたぎる。
ささいなことでもすぐに腹の立つオロカナ習性、この一大事は過去の人生の怒り
を全部足しても、とても足りない。

赤土の粘土質ときてる上に、西向きの傾斜地とあって、水を撒いても直ぐに乾き
きってしまう不毛地帯。
秋には河川敷の枯れ草を刈り取ってはセッセと埋め込み、春には遠き海岸に打
ち寄せた海草拾いに何度も出かけ、農協から鶏糞の肥料を10袋も買い求め、そ
れでも心配になって油粕だの焼き灰だのを追加してたっぷり仕込んだ。
豆粒ほどの畑なれど、なんとか作物の育つ土壌に生まれ変わった。
土が乾いてはかわいそうと、苗木のまわりにたっぷりと枯れ草を敷いて、それで
もまだ不安だからいろんな雑草を丹念に植えもして、あらゆる手を尽くした。

貧相な苗木であったが、訪ねる毎にグングン成長して勢いを増していく。
強い風に痛めつけられ骨(幹)折れ傷ついて、もうこれでお終いという時もあったが
見事に立ち直った。
育ての親の気持ちが通じたのか、けなげにも応えてくれたのだ。

花が咲き青い小粒の実を日増しに増やして8本とも元気いっぱい、 甘い匂いもいっ
ぱい夢いっぱい。
初めての収穫を夢見て、なにもかも希望に満ちあふれていた日々だったのに。

たった先ほどまで。