仮装も加わ
って
昔ながらの
盆踊り
盆踊り

「若いころは船を、えっちらこっちら漕いで、他所の盆踊りに
でかけたもんさ。」
「道が悪かったもんで、船の方が早かったさ」
淡々と語っていた爺さんは、少し活気づく。

「すごいなあ。あんな遠いところへ。3時間ぐらいかかるんじゃ
ないの…なんでまた苦労してあんな遠くへ」

「…若い、女さ 」
爺さんはちょっとはにかんで、嬉しそうに答えた。

「若い娘さんなら、ここにも、たくさんおったんじゃないの」

「ここのは、なあも…いいのおらんのさ 」
力強く確信をもって言い放つ爺さんは、少し男っぽい。

遠い異性は、なんといっても未知の魅力が漂う。
海を隔てれば、なおさら美しく輝やいていたのだろう。
若者達は胸をときめかせ、盆踊りの唄にのって、湾内を自由に
行きかったのだと想い巡らす。

めかし込んだ娘さんは浴衣姿が気にかかり、連れの話も上の空。
輪の外での歓声は、久しぶりの再開を喜ぶ帰省の若者達。
名物の仮装も、つぎつぎと輪に加わり笑いを誘う。
酒がふるまわれ、肉声の唄がこれまた名調子。
どんな民謡かと聞くと、あれは「卑猥の内容サ」と茶目っぽく教
えてくれた。

ことしも、日の落ちた対岸から風に乗って、太鼓と唄が誘う。