次郎
左がいたちで、右が太郎です。
いたちは名前を「次郎」としま
した。
次郎が食べているのは、りんご
の皮です。
「ゴト ゴト ゴト ゴト 」と、寝入りばなに音が突然に天井から降(ふ)ってくる。
屋根を横切るすさまじい足音である。
あたりは深夜の夜陰に包まれて不気味なぐらい静かな闇夜。
すかさず飛び起きてガラス戸越しに外を見る。
どんなに深い眠りにいても、反射神経で起きてしまう。

ほのかな外灯に映し出される外の風景はあまりにも暗く、視界はせいぜい
数メ−トルぐらい。
それでもじっと目を凝らして外を見つめる。
いきなりのことで、寝ぼけまなこだから目も点となりボワ−としている。
やがて一秒、二秒、三秒…と時が経つにつれ、次第にあたまも焦点も定まってきた。
こうして時が過ぎ、一分以上経過してもなんの変化も起きないことも。
結局、「ふうー」と大きなため息をつく。そして未練を残して、ふとんを被って夢の続き
となる。
こんなことは、期待が大きくなければとてもできたものではない。

がっかりして寝床に潜ろうとすると、それはまるで不意打ちにあったみたいにいきなり
姿を現す。…てなこともあって、けっして気が抜けないのだ。
でもたいがいは、屋根からの音が消えて15秒前後で期待がかなう。
けもの道の屋根を通りすぎて地面に飛び降りるのは、今か。
さあ、早く姿をみせてくれ。

一瞬何かが横切る。
あっという間に視界から消えるものだから、やっと目で追えるほど。
最初のころは、目に焼き付くことだけでも精一杯だった。
いつもの場所までやって来ると、すくんと後ろ足で立ってくるりと顔をこちらに
向ける。
「いたち」が「太郎」に替わって、あいさつにやってきたのだ。
おおきく背伸びしないとこちらが見えないのかもしれない。大きく起立の姿勢をとる。
小さなクリクリ目と合うと、だらしなく寝転がっている自分が恥ずかしいくらいだ。

姿勢を正して起き上がり「やぁー」と、あいさつを返す。
そのうち、ぬいぐるみみたいなイタチともココロが通えないものだろうか。
暗闇に波打って消えていくイタチを、目で追いながらいつもそう思う。
まぶたには、金色に輝くしなやかな流線体がしばらく焼き付いて離れそうもない。

多いときは一晩に3回、4回と頭の上で屋根を横切る音がする。
そして、きまってパチット目が覚め、寝返って窓の外を見てしまう。
もう、条件反射みたいになってしまった。

「ゴト ゴト ゴト ゴト 」
これが二晩、三晩と続くと、きまって睡眠不足に…。

ふたりそろってお帰りです。