海からみた
全景

間に合わせ
ばかりで申し
訳ない。
サバ く

同じポイントなのに、一日経っただけで釣れる魚が違う。

秋は、どうしてもアジを釣りたくなる。
サビキ仕掛けで10分ほどコマセアミを撒く。
10分も過ぎて反応がないと、やる気が急に失せてしまう。
早く切り上げて場所を移動しようか、それともサビキを止めて
キスねらいに変更しようか、情けない気持ちになってくる。

当日は波もなく、秋の高曇りの絶好の釣り日和。
いきなり強烈な引きに、頭の中は真っ白け。
……
「ウッ」
どこかで味わった確かな手応え。
体が覚えているかすかな記憶を確かめる為あせってリ−ルを巻
くが、ハリスが1号か0.8号の細物だから強引は禁物。
水面近くで、激しい横走りをみて「サバ」と合点。
優に30cmを超える大物である。
かつて時々出かける乗合船で、釣り上げていた大きさと変らな
い。

知人は最後の詰めでバラしている。
ハリス切れで残りが2〜3本になっているが、仕掛けの交換時
間を惜しんで必死だ。
生まれてはじめてサバを釣ったと言う。

この釣りも、5〜6匹も上げれば満足してしまう。
以前、乗合船で50匹以上も釣り上げて、始末に困ったものであ
る。
家に持ち帰っても、せいぜい2〜3匹で充分だろう。
日持ちがしないので、あまり歓迎されない気の毒な魚なのだ。
それに、この近海のサバは油の乗りがいまいちのようでパサパ
サしている。

案の定、次第に飽きてきた。
釣り上げても逃がしてやるの繰り返しで、へら釣り師みたいに
「さおさばき」だけ楽しむことに。
ボ−トの中は鱗だらけ、服にも顔にもいやになるほど張りつき、
乾くと痛い。

あっという間に秋の日は落ちる。
遊びつかれてアンカ−を上げる手が思うように動かない。

帰途は、釣りの余韻に浸りつつ西日輝く水面に、木っ端船の波
紋を描く。