開墾して
3年目の花畑
愚妻の領域
開墾

もうチョット、 もうチョット。
ツルハシの先端が、まるで岩のように硬くなった土を少しずつ掘り起こす。
朝から休みなく続けているのでバテバテなんだが、慣性的にツルハシを振り
上げてしまう。
「もう少しでやめよう」かをツルハシを振り上げる毎に、「もう少しやろう」かを
ツルハシを振り下げる毎に繰り返す。
一時は頭の中が空っぽだったり、、一時は嫌気だけだったり、黙々とした作業
のなかで感情が交互に行き来する。
これが開墾実習の一番きびしいカリキュラムである。

念願の畑をつくろうと始めてみたものの、ブルト−ザ−でカチカチに踏み固めら
れた赤土だからやっかいなこと。
しかも、足場の悪い斜面ときている。
同じ耕すのなら削岩機のほうが、ツルハシより能率が上がるのじゃないかと思
うぐらいチットモ作業ははかどらない。
いくら頭より体力仕事が向いているといっても、あまりにも筋力に偏りすぎてい
る。
開墾時代の追体験は、「はるかなるノスタルジィ−」に、はるかに遠く感じられる
のだ。

無我夢中と言っても邪念なくして、所詮ガンバレたものではない。
菜園好きな妻の感謝の一言を聴ければと、体に鞭打ってツルハシを振り上げる。
ただ…、ここまで身を粉にして労働すると、自然と土への愛着が湧いてくるもの
らしい。
妻に渡したくないという気持ちが、知らず知らずのうちに目覚めても来よう。

「あんたは釣りで、畑は私の約束でしょう! 手出ししないで好きなようにさせて
よ」

ジジィ・ババの畑の主導権をめぐる醜い争いは、できるだけ避けたい。
だけども、菜園をめぐる小競り合いは、ずっとこの先もジトジトと続きそうな予感が
してならないのだ。