小屋の中で。
娘からの写真
の提供は娘の
一日のアルバ
イト代より高く
ついた。
入り江に歌声

白い砂浜が続く海岸に、真夏の太陽が照りつける。
ここは、紺碧に輝く太平洋を地平線まで見渡せる「南張り海岸」。
メロンが特産らしい。

狭い六畳に7人の娘、しかも初めての合宿の夜。寝付けずにほとんど起きていた
らしい。
海岸までの車中は、寝不足のため静かに寝っぱなしである。
でも、さすがに若い。
車から降りると、大声を出しながら砂浜を駆け下りて行った。
そして勇敢にも、たくさんのサ−ファ−の漂う中を無邪気に群れ泳いでいる。
台風の余波でうねりがとても高く、絶好のサ−フィン日和か。

彼女たちから遠く離れた磯場で潜ってみることにした。
昆布の幹に捕まっていないと、波に体がさらわれ岩場に叩きつけられそうだ。
透明度の高さは、さすが外海である。
どこを覗いても魚がいて、貝がいて、飽きることのない豊かな海だ。

一日たっぷり泳いで、つかれて、小屋にもどってホット一息。
娘御用達の運転手から、ようやく解放された。
昨夜は泊る所がなく車で一泊したが、今日は予約しておいた交流センタ−が今宵
の宿。
泊まり込みの老夫婦が管理人の2階建の白い建物で、ちょうど入り江を挟んで真向
かいに位置する。
かつては大学の研修所だったらしく、飾り気のない大部屋に粗末な2段ベットがずら
りとならんでいて、素っ気ない。

小屋が完成する前に、ひとりで何度か泊っているので、すっかりお馴染みさんになっ
ている。
今日は、いつもの2段ベットと違って、少し料金の高い和室に陣取ろう。
この部屋からだと、娘達の様子がなんとか見えそうだ。

日が落ちて、すっかり暗闇になった頃、我が小屋の明りがほのかに見えだした。
たき火の炎がときどき大きくなると、娘達の動きが炙り出され、かすかに見えてくる
きっと、サザエを焼いているのだろう。
ひとりに2個、 計14個を食ってもらおうと必死になって漁ったものである。

海辺にポツンとあって、平生は静寂そのものであった交流センタ−は、夏休みになる
と急に活気づく。
学生達の合宿に活用され、特に音楽関係のクラブが常連となっているようだ。

今日も合宿の学生達が朝早くから練習に励んでいる。
暑い昼間は休憩らしく、涼しくなった夜に再び開始するのだ。
演奏する方もご苦労なことだが、つき合いで聞いている方もタイヘンなのである。
やがて練習も止み静かになった頃、対岸から娘たちの元気な声でシュプレヒコ−ルが
放たれてきた。
こちらの学生達も気づいたらしい。
声援に応えようと、以前にまして力強い音楽活動の再開となった。
演奏が終って静かになると、すかさず娘達の、はちきれんばかりの歌声が海に伝う。
またまた演奏の再会。
……夜のふけるまで。