花火

小さな入り江に浮かぶ小さな島が、花火の打ち上げ基地であ
る。
花火師たちのせわしい動きが目で追えるほど、船溜りから近
い。
ここは、山々が両腕をひろげて海をかかえているリアス式海岸。

ヒュルヒュル ドッカ−ン

打ち上げの音が山に囲まれて逃げ場がないのか、大音響とな
って耳をつんざき、全身を震わせる。

「エントリ−ナンバ− ○○ 協賛 ○○商店様 ○○号○
○菊○○ 」

ひとときの間を置いて、仮設のスピ−カ−からアナウンスが流
れてくる。
次に打ち上げる花火の予告が丁寧に説明される。

目に写るわずかな外灯のあかりだけでは、人出の様子がわか
らない。
花火は平凡でも、暗闇が濃いからひときわ鮮やかだ。
天と海の境がなく、海面にもう一輪咲く。
次の打ち上げまでは、長く、静かな暗闇である。

「エントリ−ナンバ− ○○ 協賛 ○○ 漁業組合様 ○○
号○○ 大菊○○ 」

ヒュルヒュル ドッカ−ン

疲れたら堤防から足を投げ出して、仰向けに寝ころがる。
コンクリ−トのあたたかさに、ひんやりした海風がここちよい。

素朴な華やかさが似合う五ヶ所湾 の「夏の花火大会」。
ひとりじめのようで、ぜいたくすぎて、もったいないから友人を誘
う。
来るのに3時間の日帰りでも、満足そうだ。

「エントリ−ナンバ− ○○ 協賛 ○○工務店様 ○○号
○○菊○○ 」

ヒュルヒュル ドッカ−ン