冬の風景。 間に合わせ なので、夏に 差し替え予定。 |
蛍 知らない土地を気ままに歩きまわると、おもわぬ拾い物をす る。 ことに、小さな町や村ほど、気安くゆっくりと歩くので落しも少 ない。 海沿いの国道を外れ、川づたいに山里に向かう。 こんなところに、と思う看板が、民家の土壁に。 水原弘「金鳥の蚊取り線香」 。「国際秘宝館」・・・・ 軒下の洗濯物はどれも彩りが渋く若さに欠けるが、どの家 も花が鮮やか。 誰に出会うこともなく集落を通り抜け、小川に沿った農道を とぼとぼと上流に進む。 やがて田んぼが明るく開け、二股に分かれた道に小川が交 わるところ、小さな作業小屋がぽつんと建つ。 そこに、手書きの粗末な案内の板切れが。 「蛍の里」だった。 橋の真ん中で大の字になって空を仰ぐ、気分は最高。 早春の陽気に誘われ、うたた寝をしてしまう。 田植え前のレンゲが風にゆれる。 季節到来。 待ちに待った初夏の宵。 民家の明かりが届かぬ真暗闇に、蛍が舞う。 せせらぎに幾筋もの光が交わっている。 沢筋に沿った道の案内にもってこい。 稲田に群生の乱舞。 あっちにも、こっちにも。 情けないかな、記憶に宿した蛍の思い出は30年以上も開 くことはなかった。 田が切れる草群らに、無数の蛍が沸き上がり。 それは、まるで、銀河のような。 |