入り江にヨットが
浮かびます。
対岸の右側が
漁師さんの小屋

対岸の漁師

対岸に久しぶりに足を運んだ。
新しく造成された接岸帯に釣り人が絶えないので、気になっていた。

真珠養殖の作業船が規則正しく並んでいる船溜り。
ひと気がない昼下がり。無人と思った作業に網を手入れしている漁師が目に入っ
た。
がっちりした体格なので気後れしそうだが、この網で何を獲るのかと聞いてみる。
返事は「何でも」と、そっけない。
立ち去るタイミングが分からなくてボケ−と突っ立っていたが、あきらめて立ち去ろ
うとすると、
「網は一年で駄目になるさ、趣味でやっているようなもんさ」、と。
さらに。
「魚が獲れても、売らんと近所に分けたりするんさ」、とつづけてくれる。

感心して聞いていると手を休め、作業小屋の2階に案内された。
階段の壁には、たくさんの釣竿が直ぐにでも使えるように整然と掛けられている。
不思議に思って訳を聞くと。
口篭もりながらぶっきらぼうに、「娘の子供たちがたくさんやって来るんし……」。
と、後がつづかない。
どうも孫たちの来るのを楽しみに、平生からしっかり準備しているらしい。
竿の数を数えるだけで、孫の数が分かってしまう。

冷蔵庫の扉を無造作に開け広げ、中からいろいろと取り出した。
断っても無理矢理持たされる。
小屋を出ると、両脇にはビ−ルやら海草の数々が。

そして夏休み。
いつもは無人で真っ暗な
漁師小屋から、一晩中明かりが灯るはずだ。